Boostフォームの全面搭載は是か否か?adidasには業界随一の踵のフィット感を誇る優れた足型を使ったEVAモデルも継続して欲しい!
2018年3月16日にadidasからAdizero Sub2というシューズが発売されます。
近頃のマラソンシューズといえばNIKEのズームフライヴェイパーが話題を独占しています。同シューズを用いた“Breaking 2”というフルマラソン2時間切りのNIKEのプロジェクトも進んでいますが、シューズに託した名前を見てもこのシューズはズームフライヴェイパーの対抗馬としてAdidasが投入してきたものと分かります。
Adidasランニングカテゴリーの頂点に位置する本シューズを見ればadidasランシューズの今後が見えてくるのではないでしょうか?
Adizero Sub2とは
Adizero Sub2の構造を見て行きます。筆者が一番気になるのはソールです。Adidasは数年前よりBoostフォームというソール用新素材をウリに開発を進めてきました。
同素材は高反発を特性としており、ショック吸収性のためにそこそこの厚みを出しても推進力を落とさないこと謳っています。店頭デモでBoostフォームの上にボールを落とすギミックがあり、確かに従来のEVAフォームより反発することは確認できます。
また筆者もソールが全面BoostフォームであるAdizero Japan Boostを所有しています。別記事でレビューを書いていますが、ショック吸収性が高いかはともかく、不思議な反発力を有しているシューズであることは間違いありません。
そして本題のAdizero Sub2では写真の通り全面Boostフォームを搭載してきました。「いよいよトップモデルも全面Boostフォーム化か〜」というのが筆者の初見の感想です。
Adizero Japan・Takimiシリーズというこれまでのトップモデル

これまでのAdidasのトップモデルのシューズには実はそれほどBoostフォームが使われていませんでした。ランニングカテゴリーでAdidas大躍進のキッカケとなった2世代前のトップモデル“Adizero Japan”の頃にはBoost フォームが開発されてなかったので当然ですが、Boostフォーム開発後にトップモデルとして君臨していた“Adizero Takumi”シリーズにおいてもBoostフォームは前足部の一部のみに搭載され主素材は従来のEVAフォームでした(写真前足部のちょっとモコモコした白い部分がBoostフォームです)。
Adizero Takumi時代にBoostフォームがあったにも関わらず全面採用されなかったのは、当時の開発アドバイザーの三村氏の姿勢と理解しています。マラソン界ではプロ選手を中心に圧倒的ファンを抱える三村氏は、アシックス退職後まさかのAdidasの開発アドバイザーに就任しました。さすがグローバルブランドのAdidas、容赦ないヘッドハントです(退職後の顧問契約なので厳密には違いますが)。
Adidasとしてはマーケティングの観点からは本来Takumiシリーズも全面Boost化したかったのかもしれません。しかし職人気質の三村氏の出した結論は前足部のみの採用でした。
ソール構造は、セパレート型で中央にかなりの強度の樹脂製シャンクが配されています。設計思想としてはショック吸収に特化する踵部分は従来通りのEVAフォームとし、蹴り出し・加速を担う前足部の一部に限ってBoostフォームを採用したと見ることが出来ます。
三村氏との契約終了
そして三村氏とadidasの顧問契約は最近終了し、更新されることはなかったようです。その後三村氏はニューバランスと顧問契約を締結されたので(華麗なる転身!)、筆者としては冬に発表されるニューバランスのニューモデルに期待しているのですがそれはまた別の話。
三村氏と決別したadidasがどういう開発姿勢に舵を切るか楽しみかつ不安視していたのですが、やがて発表されたSub2を見て冒頭の通り「やっぱり全面Boostフォーム来たかー」と実はガッカリしてしまいました。以前のレビューに書いている通り、全面Boostフォームは反発のリズムが筆者の脚に正直合わないんですよね。。。
これで「Sub2>JAPAN>Boston」と、Takumiシリーズを除いてサブ4レベルまでほぼ全てのラインでBoostフォームが全面搭載されることになります。願わくば愛用しているTakumi Sen/Renシリーズが廃盤 or Boost化されることなく継続することを期待します(三村氏との契約上、退任後の三村氏モデルの扱いはどうなってるんでしょうね?)。
Adidasランシューズのコアバリューはなにか?

Boostフォーム採用の是非は個人の嗜好に依るところもありますのでさて置き、Adizero JAPAN以降アディダスのランニングシューズが爆発的に流行したのは足へのフィット感(特に踵周り)が素晴らしいからだと考えます。
それ以前のアシックス・ミズノを中心としたマーケットで主流だったシューズは、スリムモデルを用意することで前足部のフィット感は選べましたが、踵が緩いものばかりでした。日本人用に開発されたのかは分かりませんが、この抜群のフィット感を産むアディダスが製造に使っている足型こそがアディダスのランシューズのコアバリューだと考えます。
三村氏が開発していた時代のアシックスシューズも踵が緩かったので、これは三村氏が持ち込んだ設計ではなくアディダス開発チームの成果だと捉えています。
Boostフォームだけでなく幅広いシューズの選択肢を
差別化&マーケティング戦略上、Boostフォーム化に舵を切りたいメーカー側の気持ちはよーく分かりますが、筆者の様なオールドファンを大事にする意味でも、この素晴らしい足型を使ってEVAソールモデルの開発も継続して欲しいと願います。
レーシングモデルのTakumiシリーズの継続はもとより、Adizero CSやManaなど、ジョグやスピードトレーニングに使えるEVAソールモデルの後継機の復活も期待したいところです。

まとめ
本来なら東京マラソンでAdizero Sub2を履くキプサングが華麗に優勝して華々しく3月に発売というシナリオを描いていたのでしょうが、皮肉にもキプサングは体調不良でリタイア、東京マラソンで最も注目を浴びた設楽選手が履いていたのはライバルNIKEのズームフライヴェイパーでした。
今年の秋冬には三村氏モデルを発表するニューバランスが市場の話題を掻っさらって行くでしょうが、数年来のファンとしては「頑張れアディダス!」とエールを送って投稿を締めくくりたいと思います。
ではまた。