加速が伸び切らない、守りの高速レース用シューズ?|On Cloudflash(オン クラウドフラッシュ)レビュー

加速が伸び切らない、守りの高速レース用シューズ?|On Cloudflash(オン クラウドフラッシュ)レビュー

フィット感良し、しかし他社製薄底レース用シューズほど加速の伸びがない。独自のクッションソールが足許を支えるが、重量もあり長距離適性はやや疑問符。評価&用途の難しいシューズ

評価 ★★★ 3/5

Onのトップモデル Cloudflashのレビューです。筆者はこれを東京マラソンに向けたポイント練習、ステップレース及び30キロ走で履き、東京マラソン本番でも着用しました。それらを通じた使用感レビューです。

良いシューズとはなにか?

突然の問いかけですが「良いシューズ」とはなんでしょうか?フィット感、クッション性、反発力、重量などなど色々な評価ポイントはあります。筆者も過去記事でこれら切り口からシューズレビューを行って来ました。

しかし、とどの詰まり、フルマラソンを走るランナーに取って良いシューズの条件とは以下に集約されるのでは無いでしょうか?すなわち

  • 同じタイムで走れるのであれば、脚の筋疲労が少ない方が良いシューズ
  • 同じ脚の筋疲労で走れるのであれば、速いタイムが出る方が良いシューズ

いささか肩透かし的な記述ではありますが、マラソンは結果が全て。シューズの良し悪しはクッション性やフィット感といった個別要素でなく、総合成績で判断すべきと考えます。

東京マラソンをCloudflashで完走した感想は?

そしてこの秋~冬とCloudflashを使ってみての感想です。

本来ならば東京マラソンでPB更新をして「Cloudflashサイコー!」という記事を掛ければ良かったのですが、残念ながらCloudflashを着用して臨んだ東京マラソンでは序盤からスピードの伸び悩みをわずらい、最終的に36kmで脚が売り切れてPBから6分遅れでサブ3未達成という事態になってしまいました。

これには東京マラソン完走記に書いたとおり体重増等の要素もあるのですが、トライアルで参加した30km走あたりから、それまでレースシューズとして愛用していたadizero takumi renと比してスピードの乗りの悪さは感じていました。

シューズレビューはあくまで絶対評価でなく、他のシューズと比べた相対評価になります。この点、残念ながらフルマラソンを走りきるシューズとしてCloudflashは直前のレースシューズであったadizero takumi renを超えるシューズでなかったと判断しています。

以下、各項目別にコメントして行きます。

フィット感:細身の足型と相まって良好なフィット

市販のレースシューズでフィット感を最も評価しているのは、adidasのレースカテゴリーのシューズです。他の方のブログでも特に踵のフィット感を中心として、adizeroシリーズのフィット感について高評価をよく見かけます。

上記はadizero takumi renとの比較です。CloudflashはOnのシューズでもかなり細身の設計で、adizero takumiシリーズとほぼ同等のタイトフィットです。細身・タイトフィットを是とする筆者にとって、フィット感は文句ない出来でした。

安定性:硬質のスピードボードが捻れを防止

写真の通り、Cloudflashのソールの作りは極めてシンプルです。半分に切った竹輪のようなCloudtecというクッショニングに直付けでスピードボードという黒い樹脂製一枚板が挿入されています。この一枚板がソールの捻れ防止と反発力を担っています。

細身ながらも足裏が乗りきるソール設計とこのスピードボードの硬質さにより安定性に違和感は感じません。

クッション性:圧縮成型のCloudtecでレースシューズとしてはそこそこのクッショニング

シューズのクッショニングは上写真の半切りの竹輪状のCloudtecというEVA素材が担います。Onの他のシューズに比して薄めのCloudtecになりますが、これは圧縮成型することでこの薄さを実現しているそうです。

(比較対象としてのCloud Xの厚めのCloudtec)

厚みはありませんが、Onのアイデンティティといえる中空構造のこのシステムのお陰で、他社の薄底レースカテゴリーよりは脚に優しいクッション性を感じます。

反発力:硬質スピードボードがかなりの反発を返してくるが、スピードの伸びはイマイチか?

本シューズの加速力は、前述の一枚板のスピードボードが担っています。ソール全体に硬質のプレートを挿入して反発力を引き出すというのは、ナイキのヴェイパーフライ4%と同じ設計思想ですが、販売タイミング的にはOnが先行していたと記憶します。

本シューズのソールは手で曲げてみればわかるのですが、かなり硬質で、手の力の入力に対し跳ね返してきます。履いて走ってみても薄底シューズとは違った反発の返しですが、かなりの反発力を感じます。

ただ、ハーフや30km走で使ってみて、takumi sen & renのような「薄底×強力なシャンクを埋め込んだセパレートソール」設計のシューズに対してはスピードの伸びで劣る印象です。

重量:210g超えでレースカテゴリーとしてはかなりの重量

(On Cloudflash jp27.0サイズ重量。キャタピラン装着で216g)

重量は27.0cmでキャタピラン装着にて216g。

レースカテゴリーとしてはかなり重めの設計です。ベンチマークとなるadizero takumi ren boostが186gであるのに対して+30g。

Adizero takumi ren 重量
(JP27.5cm、キャタピラン75cm装着)

人間の片脚の重さが数kgであることを考えれば30gなんて誤差の範囲とも言えますが、シューズは脚の一番末端に位置するもの。フルマラソンで3万~4万歩のステップを踏む中でこの30gは無視できないのではないかと考えています。

履いて走った感じも、200gを切る各社のレースシューズに比べ軽量感ではやや劣ります。薄底シューズがもたらす独特の足裏と地面が近い感じを軽快感・軽量感と錯覚している節もありますが。。。

総評

なにやらネガティブな記載が続きましたが、フィット感を始め各要素ではそれぞれ中々の好印象を持っています。

ただOnが新興ブランドだからということではありませんが、adidasのtakumi sen/renやアシックスのターサージール等のような、トラディショナルな薄底セパレートソールのシューズに比べると、フルマラソンを走りきる能力としてはまだ劣っているのではないかというのが現時点の感想です。

重量やヒール部分とフォアフット部分の役割分担、シャンクを中心とした捻れ防止機構など、個別の要素では微々たる差かもしれませんが、42kmの中では細かい積み上げがジワジワ効いてきます。

Cloudtecの特徴的なクッショニングは優秀なので、トライアスロンの最終ランパートのような脚が消耗している中で守りながら走るには良いかもしれません。しかしフルマラソンのようなフレッシュな脚で記録目指して突っ走る局面では他社薄底シューズが筆者にとっては現状ベストな選択肢と言わざるをえません。

しかしメーカーの思想含めて応援したいブランドではありますので、これからも新製品には出来るだけ脚を通して行きたいと思います。

ではまた。


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