復刻希望!Adizero Takumiシリーズをレースシューズとするランナーのトレーニング用として、およびサブ4狙いのレースシューズとしておすすめ
評価 ★★★ 3/5
レースシューズはレースペースのスピードトレーニング及びレース本番でしか履かないため、意外と脚を通す機会は少ないものです。対してトレーニングシューズは年間のトレーニングを通じて頻繁に履きます。レースシューズ選びに人は大きく気を使いますが、履いている時間から考えるとトレーニングシューズこそこだわるべきです。
今回レビューするAdizero CS boostは、筆者の直近までのトレーニングシューズでした(現在はon cloudに移行)。筆者がトレーニングシューズに求める性能は
- 毎日のトレーニングで距離を重ねても脚を保護してくれる適度なクッション性
- 同じく怪我の原因となる「ブレ」を抑えるフィット感・安定性
- レースシューズとのメーカー、足型、加速の仕組みの連続性
です。このうち1、2はシューズに求められる当然の性能として、どこのメーカーのシューズでも充足されるモデルを探すことが出来ますが、3についてはそのメーカーが出している数少ないトレーニングカテゴリーのシューズとの相性の良し悪しで決まってしまいます。
各メーカーでシューズの設計思想は異なりますので、例えばAdidasのシューズでトレーニングして本番はニューバランスのシューズとなると、履き替えた時や走り出した時に違和感を感じることもありますので、出来ればトレーニングシューズとレースシューズのメーカーは揃えるべきです。逆にいえば(レースモデルはどこも性能・設計が近似するため)レースモデルと設計が乖離し過ぎないしっかりとしたトレーニングモデルを出しているメーカーの靴を日頃&レースで履くべきとなります。
「トレーニングモデルを作るのなんて各メーカー当たり前だろ」という声が聞こえてきそうですが、なぜかトレーニングモデルとなるとラスト(足型)がゆるくなったり、筆者が殆どの人には不要と考えているプロネーション対策と称してソールの一部に硬いパーツを使ったりとレースシューズとの足入れ感・使用感が大きく離れたシューズを作りがちです。
前置きは長くなりましたが、Adizero Takumiをレースシューズとしていた筆者にとって、その設計を完全に踏まえつつトレーニング用にスペックダウンした(クッション性を増した)当シューズはベストのトレーニングシューズでした。「でした」というのは現在ではCS boostはラインナップから外れてしまっています。Takumiシリーズは依然としてAdidasのトップモデルとして君臨してますので、それに繋がる本シューズはぜひ復刻してほしいものです。それでは以下、実走レビューです。
①フィット感
足入れ感は安心のAdidasクオリティです。Adizero takumi&Japanシリーズに準じてアッパーもソールもややタイト目のジャストフィットです。
②安定性


写真上段の通りAdizero CS boostのソールは「EVA+(前足部)boostフォーム」で構成されます。これは写真下段のAdizero Takumi Ren(&Sen)と同様の作りです。Takumi Renよりクッション性を増すためにやや厚めのソール&やや少なめのboostフォームとなっていますが、安定性は問題を感じません。
むしろTakumiシリーズより踵部分のソールの絞込が少ないからか、Takumiシリーズで時折気になる「踵がソールに乗り切れていない感じ」もありません。
③クッション性
一般的なトレーニングモデルに比べるとクッション性はやや低いと感じます。筆者はこれをデイリーのトレーニングモデルとして使用していて特段のトラブルはありませんでしたが、後述の通り重量面ではやや軽量モデルになります。
ちなみにシューズ名の「CS」は確か「クッショニング&スタビリティ」の略なので、設計思想としてもクッション性・安定性を意識しているものと思われます。
④反発力
トレーニングモデルですので反発力が強いわけではありません。ただboostフォームをTakumiシリーズと同じように前足部に配置していますので、走った感じはTakumiシリーズをマイルドにしたものです。
⑤重量

重量は205gとトレーニングモデルとしては軽量な部類に入ります。Takumiシリーズに準じた前足部のboostフォームで加速していけるので、フルマラソンサブ4狙いのレースシューズとしても使えると思います。
総評
廃盤とするのが惜しいほどよく出来たシューズだったと思います。Adidasのランニングシューズについては、Adidas躍進のキッカケとなった名機Adizero Japanを開発した萩尾氏がPUMAに移籍し、次いで躍進のキッカケとなったTakumiシリーズを生み出した三村氏がAdidasからニューバランスに顧問契約を切り替え、と過渡期にあると感じます。
足許でもNikeのズームフライが猛威を奮っていますので(箱根でAdidasを履く青学が負けていたら本当にヤバかったと思います)、Adizero Japan以来のAdidasファンの筆者としては、上から目線で恐縮ですがぜひ再度奮起して次世代の名作シューズを世に送り出して欲しいと思います。